厚生労働省は、ニコチン依存症治療を若者も受けやすくするよう、保険診療の対象を緩和化する方針を掲げ、来年4月の診療報酬改定に合わせた実施を検討中だ。
11月に行われた中央社会保険医療協議会総会で厚労省が挙げた課題・論点は、「2011年時点の20代男性の喫煙率は約39%、20代女性は約13%」「若年からの喫煙は依存症リスクを高める」といったもの。
しかし、そもそも“若者は依存症リスクが高い”ということからして、真実といえるのか。その前に、喫煙は本当に依存性があるのか、という意見も多い。
東京丸の内のオフィス街にクリニックを開業しニコチン依存症治療実績もある医師は、「依存症というのは、依存の結果として発生する精神や身体への影響が問題となること。喫煙を短絡的に依存症とするのは正確ではない。“多少の依存性はある”というのが正しい表現だろう」と語る。
では、たばこがやめにくいといわれるのはなぜかと問うと、「依存性より、むしろストレス解消目的など別の理由があるからではないか」との考えを示してくれた。
厚労省の「保健福祉動向調査(2000年)」によると、ストレスの対処法としてたばこを挙げる人は全体の14・6%。買い物(16・4%)などに次ぐ水準。
また、11年の「国民健康・栄養調査」では、習慣的に喫煙している人の年齢別の割合は、男女とも30代をピークに下がっていく結果が出ている。このあたりにも、喫煙が単に依存症ではないことを証明するヒントがありそうだ。
ところで、“ニコチン依存症”と称する禁煙治療の保険診療は、どれだけの効果を上げているのだろうか。09年に行われたニコチン依存症管理料算定保険医療機関での禁煙成功率の実態調査によると、禁煙治療終了の9カ月後に禁煙を継続している人は全体の30%以下。また、禁煙治療プログラムを最後まで受ける人は全体の35・5%で、そのうち9カ月後も禁煙している人は50%弱だった。
この程度の“効果”でも保険診療の対象の緩和を急ぐ必要があるのか。その点について、厚労省保健局医療課に問い合わせると、「どのように緩和するかは検討中」との回答で、具体策はまだ出ていないという。