日本限定ウイスキー“ミズナラ”と太鼓に響く、伝統の音。

  • 写真(ボトル):宇田川淳
  • 写真:内藤貞保
  • 文:吉田桂

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シーバスリーガルのマスターブレンダーであるコリン・スコットさんが感銘し、「ミズナラ」を生むきっかけとなった日本の匠。その体現者に迫る企画の第2回は、親子で太鼓職人として活躍する三浦太鼓店を紹介します。

真鍮製の胴体に皮を極限まで強く張る、ちゃらぼこ太鼓。パチパチと軽い音が出る。
5代目三浦彌市と6代目、そして次女の史帆さんと若き職人の4人で店を支えている。
慶応元年、江戸末期の愛知県岡崎に誕生し、今年で創業150年を数える「三浦太鼓店」。初代より受け継がれる「彌市」の名を看板に、現在は5代目と6代目が親子で太鼓づくりに力を注いでいます。
かつては神事や祭事の場で大いに使われていた太鼓ですが、明治から大正へと時代が移り変わり、やがて昭和になると戦争の影響もあって、需要は激減。それでも「三浦太鼓店」は太鼓づくりを諦めませんでした。それは、三河地方に伝わる祭囃子に使う、ちゃらぼこ太鼓を次世代に残すという使命があったからです。
「胴体が真鍮で、ネジで締め上げる特殊な締太鼓のちゃらぼこ太鼓づくりには、特殊な道具とノウハウが必要なんです。うちを頼ってくださるお客さんがいる限り、太鼓づくりをやめるわけにはいきません」と5代目。
伝統を自分の代で絶たないように……、その一心で続けてきた太鼓づくり。そこに15年前、和太鼓が一大ブームになったこともあり、お客さんも増えたといいます。
三浦太鼓店オリジナルの、担ぐタイプの太鼓「調べ」。デザインも自由にオーダー可能。
ステージの上で映える煌びやかな仕上げ。紐の色は10種から選べる。
胴体の口を削って角度や形を調整し、水に浸したのちに擦って柔らかくした黒毛和牛の皮を張る。各工程の丁寧な手仕事はもちろんのこと、三浦太鼓店のこだわりは最終工程である鋲打ちの瞬間にあります。
「仕上げの場にお客さんに立ち会っていただくようにしているんです。音を確かめながら、納得していただいたところで鋲を打つ。実は、私も息子も太鼓チームに所属していて、太鼓を叩く立場になってから、お客さんが“これだ”と思う音が出せる太鼓をつくりたいと、強く思うようになったんです」と5代目。
そして、プレーヤーとしての経験から生まれたのが三尺六寸(直径約108cm)の大締平太鼓。くり抜きの大太鼓に劣らない重低音を響かせる、比較的持ち運びしやすい桶タイプの太鼓です。
「自分がほしくてつくったのが最初なんです。すると思いのほか反響があって、いまでは全国から注文があります。これは板を張り合わせた桶ですが、昔ながらの太鼓は1本の木をくり抜いています。主流とされるケヤキやセン、タモのなかでも、木材が変わると音色も変わるんです。ウイスキーも似ていますね。ミズナラの樽を使った『ミズナラ』にも独特の味わいがあるはずです」と6代目。
水に浸し、道具で擦って柔らかくした牛皮を一針ひと針、手で縫い上げる。
現在は5代目が主に伝統的な太鼓を、そして6代目が趣味用の和太鼓を担当している。
伝統を守り、伝統をつくるという理念で共通する両者。
伝統を守り、伝統を創る。これは三浦太鼓店の理念。ちゃらぼこ太鼓をはじめとする伝統的な太鼓の制作と修理を続けることで伝統を守り、愉しみとしての和太鼓を発信し続けることであらたな伝統を創るのです。
「修理のために届いた太鼓の皮をめくったら、胴体の内側に初代の名前が書かれていることもありますし、500年前につくられた神社の太鼓を直すこともあります。太鼓と向き合うことで、先祖に出会えたり歴史を感じたりできる。そんな自分の仕事を誇りに思います。そして、古い太鼓が教えてくれるんです。伝統を守り続ければ、この先も太鼓と僕たちの歴史が続いていくということを」と6代目。
スコッチウイスキーの伝統を守りながら、日本限定というあらたな試みにより生み出された「シーバスリーガル ミズナラ」。封を解き、グラスに注いだ瞬間、その積み重ねられた歴史とつくり手の想いがボトルからあふれ出し、グラスを傾けるほどに深く体の奥底へと響きわたり、心を打つはずです。

シーバスリーガル ミズナラ
CHIVAS REGAL MIZUNARA

オレンジや西洋ナシのようなフルーティな香りのなかに、甘いタフィーやナッツのような深みを感じさせ、味わいは驚くほど繊細でなめらか。熟した西洋ナシとハチミツ、柑橘の風味にかすかな甘草のスパイシーさが重なる。日本だけで発売されている限定ボトルだ。