やっぱり超加工食品は確実に太る。アメリカ初の人体実験で明らかに

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やっぱり超加工食品は確実に太る。アメリカ初の人体実験で明らかに
Image: Prostock-studio/Shutterstock.com

カロリーが同じでも、超加工食品はモロに太ります。

「でも実数で示されたわけじゃないんでしょ?」と、今日もずるずる冷凍食品とレトルトをかごに放り込んでるそこのあなた! アメリカ政府が臨床試験で数値をばっちり出してしまいましたよ。今から説明しますね!

超加工食品は栄養素が同じでも太る

超加工食品(ultra-processed foods)の怖さは、栄養素が同じでも、食事自体のカロリーが同じでも、違いが出ることです。ただ、みな経験的に知っているだけで、直接の因果関係はあまりよくわかっていません。食べさせて比べるのも限界ありますからね(お金もかかるし)。それが栄養学の世界ではずっと頭の痛い課題だったのだと、今回の臨床試験の論文主著者のKevin Hallさん(アメリカ国立糖尿病消化器病腎臓病研究所上級研究員)は米Gizmodoの電話取材に話しています。

古の教えにもあるように、相関関係イコール因果関係ではないですからね。たとえば、超加工食品を食べる人に共通する不健康な生活習慣があるとか、低所得層だとかで、そっちが原因かもしれないわけで。超加工食品はたまたまその場にいただけで、なんの罪もないということだって十分あり得るんです。

20人を1カ月見張って食べさせてみた

そこで研究班は健康体のボランティア20人を集めて1カ月、国立衛生研究所(NIH)メタボ臨床研究棟に収容して食事を与え、体の変化を観測してみることにしました。この種の臨床試験はおそらく史上初。寝泊まりは無料です。その代わり前半2週間が超加工食品なら後半は非加工食品、後半2週間が非加工食品なら後半は超加工食品、というのが条件ですね。どっちが先かは、ランダムに決めました。

ところで超加工食品って何?

実験結果のお話に移る前に「超加工食品」の定義ですけど、これも諸説あって切りがないので、研究班は食品産業の加工技術と食材の基準を定めた国連のガイドラインに従うことにしました。たとえば朝食はこんなメニューです。

◯超加工食品:パンケーキ、ソーセージ、ハッシュブラウン

米国ファミレス3種の神器。ハッシュブラウンは芋を千切りにして油で焼けば非加工だけど、朝からそれやる人は少なくて大体の人は冷凍チンです。

◯非加工食品:ブルーベリー、生ナッツ、オートミールのおかゆ

三温糖、はちみつに手が伸びるのはなぜ? お湯を入れるだけのインスタントじゃないのを使ったみたいですね。

190519processed_breakfast
国立衛生研究所で食べさせた超加工食品の朝食サンプル。普通はケチャップ、ホイップ、いちごシロップもONなのでまだヘルシーなほう
Hall, et al (Cell Metabolism)

見分け方のコツですが、Hallさんは、こう言ってます。

超加工食品はポルノみたいなもの。定義は難しいけど、見ればわかる。

写真入り全メニューはこちら。袋、缶、箱から出してすぐ食べられる出来合いのものが超加工食品、という感じですね。同じブルーベリーでも、市販のブルーベリーヨーグルトやブルーベリーマフィンは超加工食品、となります。

実験のルール

栄養素については、栄養士が献立を組んで、カロリー、 主要栄養素(脂肪、糖質、塩分、食物繊維など)が超加工食品と非加工食品で全部ぴったんこ合うように計算しました。

次に、食べる分量。これはノルマなし。全部平らげてもいいし、残してもOKということにしました(ここ重要)。

間食はフリーで、いくらでも食べてOKです。ただし、実験前の体重維持に必要な1日の接種カロリーの2倍を超えて食べることはできない、というのがルールですね。

たったの2週間で衝撃の結果に...

で、2週間後の体を比べてみたら、同一人物でも超加工食品のときのほうが1日平均500Kcalも食べ過ぎてしまって、結果として…

超加工食品:体脂肪がつき、約1ポンド(454g)体重が増加

非超加工食品:体脂肪が落ち、約1ポンド(454g)体重が減少

という差がついたのです! たったの2週間で1kg近くも!!! 全実験データはCell Metabolismに公開中

油分、糖分、塩分がまったく同じでも違いは出る

食べ過ぎてるんだから太るのは当たり前っちゃー当たり前だけど、どうして超加工食品になるとこんなに食べ過ぎてしまうのか、はっきりした原因はわかっていないのだとHallさんは言ってますよ。

よく専門家の間で言われるのは、「超加工食品は油分、糖分、塩分が高いから食べ過ぎちゃうんだよ。どれも体重増加、肥満、メタボの主原因だしね」という説ですけど、今回の実験を見ると、そんな単純な話じゃないっていうのがわかります。だって…油分も糖分も塩分も、出発点は全部同じなんだもん!

これについてはHallさんも想像以上だったみたいで、次のように言ってます。

油分、糖分、塩分を同じにすれば、そんなに差は出ないだろうと内心密かに期待してたんだけど、見事に裏切られましたね。

ドカ食いホルモン

実験は油分、糖分、塩分とカロリー摂取量の因果関係を探るのが主目的だし、母数も少ないので、詳しい調査が待たれますけど、超加工食品になるとドカ食いしてしまう原因を知る手がかりのようなものは得られたと、Hallさんは語っています。

非加工食品のときはPYYという腸内分泌の食欲抑制ホルモンが増えて、空腹ホルモンのグレリンが減るんですよ。

な~る~。逆に言うと、超加工食品のときは食欲のブレーキも効かないし、空腹が減ることもないから食べちまうんですね。意志の力とか関係ない、体のホルモンレベルで。しかもカロリー計算だけしていてもダメってところがサブリミナルで怖いなあ…。同じ人間でも、食べ物の中身が違うだけで意志薄弱に見えちゃうんだから。

まあ、しかし、今はまだ、ドカ食いホルモンにわれわれの体を誘う食材・添加物が何なのか、犯人は特定できていません。

早食いになる

もうひとつ顕著に現れた違いは、 食事を平らげるスピードです。超加工食品はめちゃ早食いになっちゃうんです。だから体が消化してストップ信号が出るタイミングが遅れる。で、ハッと気づいたときには必要以上に食べた後だった、ということになるんですね~はい~。平均して比べると、超加工食品はみな柔らかくて食べやすいので、それも早食いの一因です。

「おいしいから食べ過ぎる」は神話

逆に、一般によく言われる「加工食品は口当たりがいいから食べ過ぎて太るんだ」というのは、今回の実験に限ってみれば、なんの根拠もないことがわかりました。ボランティアに聞いてみたら、どっちも同じくらい美味しかった、と普通に答えたんです。

「あの説も玉砕ですなあ」とHallさん。

でも超加工食品やめても、急にまずくなる心配はないんだから、そう考えるとグッドニュース。

生活習慣変えるのは大変な面もありますよね。特に食習慣ということになると、アメリカの場合、貧しいエリアは新鮮な野菜や果物を売ってるお店がそもそもなくてファーストフードと自販機だらけなので、子どもの肥満率は遺伝子より郵便番号で決まるってな話もあったりしますから。

でも、気をつけるだけで生活習慣を変えることができる環境の人にとっては、この実験結果は励みになると、Hallさんは言ってます。

学界でも世論でも、ローカーボ(低炭水化物)とか低脂肪が本当に減量に一番効くのか、効かないのか、という話になると議論に終わりがないのだけど、ダイエット戦争では散々言い争ってる人たちも、こと超加工食品の話になると、みなそりゃ減らしたほうがいいって異口同音に言うんですね。

もしかしてローカーボとか低脂肪のダイエットで痩せたと言いながら、実は超加工食品を減らしたから痩せただけだったりして。そういう人も混じっているのかもって考えると面白いですよね。ただの憶測ですけど、調べてみる価値はありそうです。


Source: Cell Metabolism