こんにちは。フィジー在住の永崎です。

突然ですが、幸福度調査にはざっくり言って、2種類あるのをご存知でしょうか?「主観系」と「客観系」です。

主観系は、シンプルに幸せかどうかを質問するタイプ。客観系は、平均寿命や成人識字率、就学率、1人あたりのGDPなどの指標をもとに総合的に幸福度を測るタイプです(詳しくはこちらの記事をご参照ください。なぜ「主観」と「客観」で結果が違うのかも整理しています)。

主観的幸福度ランキングで強いのが南国フィジー(11年・14年・16年と1位)。一方、客観的幸福度に強いのが北欧諸国。特にデンマークは13年・14年・16年に1位を獲得しています。「主観」のフィジーは南半球にある発展途上国。「客観」のデンマーク北半球にある先進国。両国間の距離は約16,000km。地球儀上だと真反対に位置しています。

今回は、そんな対照的な両国の共通点を考えてみたいと思います。そこに「幸福のヒント」が隠れているかもしれません。

共通点1:医療費が無料

(デンマーク)

国民一人ひとりに「家庭医」が割り当てられており、まずは家庭医に診てもらい、高度な医療が必要と判断されれば、その病状に適した病院へ。出産費用も無料。

(フィジー)

先進国のように高度な医療レベルには達していませんが、公立病院であれば、手術や歯科治療、出産なども無料です。

共通点2:教育費が無料

(デンマーク)

幼稚園から大学まで無料。また、デンマークには「フォルケホイスコーレ」という国民学校が約70ほどあります。17歳以上であれば誰でも入学でき、全寮制で共同生活をしながら、民主主義的思考を磨いていく「生涯学習」の場として機能しています。生徒は国籍に関係なく国からの助成を受けることができるので、学費の一部を支払うのみで、自分が好きな教科(心理学、哲学、福祉、アート、スポーツなど)を学ぶことができます。

2016年に発表されたOECDのデータによれば、デンマークの「GDPに占める教育機関への公的支出」の割合は6.1%。これは調査対象となった33カ国中で2位です(ちなみに日本は3.2%で32位と下から2番目)。

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デンマーク、コペンハーゲンにある学校

(フィジー)

幼稚園から高校まで無料(大学は有料)。また、教会や村などのコミュニティ内での教育が非常に機能しています。

たとえば、私がよく遊びに行く村があります。その人口は約200人。そのうち18歳未満の子供が約40人です。その村の大人たちは自分の子どもだけでなく、他の子どもの面倒も我が子と同じような感覚でみています。年上の子どもも年下の子どもの面倒をみています。 教会でも同じような感じです。

フィジーでは、タテ・ヨコ・ナナメの関係が非常に豊富です。 タテは利害関係の強い「両親・教師・上司」等との関係をいい、ヨコは共感度の高い「同年代の友達」等との関係をいい、そしてナナメは、関係自体強くはないが異なる価値観を運んできてくれる「年齢の離れた友人・友達のお父さん・親戚のお姉さん・近所のおばさん」等との関係をいいます。日本では、ナナメの関係が希薄と言われてますが、フィジーでは、縦横無尽の関係が日常的にあふれているので、卓越したコミュニケーションスキルが身についていきます。


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フィジーの村

共通点3:労働時間が短い

(デンマーク)

OECDの統計(2015)によると、デンマーク人(1人あたり)の年間労働時間は世界4位(38カ国中)の短さです(※1)。労使協約によって週37時間と定められています。定時で仕事を切り上げ、プライベートの時間を思うがままに楽しみます。有給休暇も年に5〜6週間あります(消化率もほぼ100%)。

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自転車で移動するコペンハーゲンの人たち

(フィジー)

勤務時間中であってもプライベートな時間かのように雑談が多く、なにかと休憩時間(Morning Tea Time/Afternoon Tea Time/Evening Tea Time)を作っては爆笑し合いながら仕事(?)を楽しんでいます。定時ピタもしくはそれより少し早めに退社し、また家族や友人とのペチャクチャ・タイムへ。

共通点4:女性が社会で活躍

(デンマーク)

男女平等指数でも常に上位をキープ。女性の就業率(15〜64歳)も75%と高く、EU加盟国中2位です。国会議員の約4割も女性(ちなみに日本は約1割)。

(フィジー)

「Global Gender Gap Report 2015」によると、フィジーの女性管理職率は51%で世界3位(125カ国中)の高さです(ちなみに日本は9%で116位)。私が勤務する会社(在フィジー)にはフィジー人の管理職が7名いますが、うち5名は女性ですね。


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私が勤務する語学学校の管理者たち。真ん中が校長、左が副校長、右が教頭というように女性が大活躍している


共通点5:投票率が高い

(デンマーク)

投票率は86%(2015年6月に行われたデンマーク議会の総選挙)。ちなみに日本の投票率は54.70%(2016年の参議院選)。

デンマーク人は「誰の、どのような意見も耳を傾けられて当然」という教育を受けているので、一票を投じることで声を上げることが自然なのでしょう。また、政治の話はランチや夕食時にも頻繁にテーマになっており、政治が非常に身近なものと言えそうです。

(フィジー)

投票率は84%(2014年9月に行われたフィジー国政選挙)。投票日に私は投票所に見学に行きました。選挙運営がグダグダなため、有権者たちが炎天下の中、長蛇の列に並びながら、投票に1〜2時間かかるも、一国民としての意思表示をきっちり行う姿に感動しました。

共通点6:共生力が高い

(デンマーク)

消費税率が世界3位の「25%」と高い負担が国民に。そして、国民所得に占める税と社会保障負担の割合を示す「国民負担率」も約7割(日本は約4割)となっており、稼ぎのほとんどを国に吸い上げられます。しかし、その税金は困っている人たちにキッチリと再分配されていきます。そんな高負担の制度でも国民が納得し、幸せだと感じられているのは、一人ひとりに「共生」の感覚がしっかりと根付いているからでしょう。

また、「世界寄付指数」(過去1カ月において、「見知らぬ人を手助けしたか」や「チャリティー団体等に寄付したか」「ボランティア活動に参加したか」)というランキングでも、140カ国中20位と上位にランクインしています(ちなみに日本は114位)。

(フィジー)

「俺のモノはみんなのモノ。お前のモノもみんなのモノ」。フィジー人は共有意識の高い「優しいジャイアン」の集まりです。シェアリング・エコノミーの最先端を行く、何でもシェアする「オール・シェアリング」の国フィジー。世界寄付指数では調査対象国に入っていませんでしたが、入っていればトップ3入りは確実でしょう。


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フィジーの学校ではシェアの重要性を学びます

まとめ

客観であろうが主観であろうが、「幸せな国」の条件はまとめるとこんな感じでしょうか。

医療と教育が誰でも受けることができ、仕事以外の時間が十分に確保され、女性も活躍できる環境があり、国民が利他的で、自国のより良い未来のために政治にも関心が高い

「幸福」はお金との距離にある

デンマークとフィジー。1人あたりのGDP(190カ国中)は、デンマークが世界9位(約54,000USドル)なのに対し、フィジーは96位(約5,200USドル)(※2)。その差は10倍以上です。

それだけ違うにもかかわらず、デンマークもフィジーも「幸福先進国」。両国民の共通点は、「お金」という存在から距離をおくことができている点ではないでしょうか。

デンマークの場合、高い税率で「お金」が国に吸い上げられ可処分所得が小さいため、お金について考える必要性が少なくなります。また、フィジーの場合、「お金」よりも「つながり」が最重要。助け合いが当たり前の文化の中では「お金」の相対的価値が下がります。

幸せへの鍵は、私たちを翻弄し続ける「お金」という存在から、どれだけ惑わされないようにできるか、どれだけ自由になれるかにかかっているように思います。

デンマークは「大きな政府」を使って、フィジーは「個々のコミュニティ」を使って、それを実現しています。

永崎 裕麻(ながさき・ゆうま)Facebook

fiji_happiness 11.jpg 「旅・教育・自由・幸せ」を人生のキーワードとして生きる旅幸家。 2年2カ月間の世界一周後、世界幸福度ランキング1位(2016/2017)のフィジー共和国へ2007年から移住し、現在12年目。在フィジー語学学校COLORS(カラーズ)校長。100カ国を旅した経験を活かし、内閣府国際交流事業「世界青年の船」「東南アジア青年の船」に日本ナショナル・リーダーや教育ファシリテーターとして参画したり、某企業のCHO(Chief Happiness Officer/最高幸福責任者)を務めたり、アフリカやフィジーで教育事業をしたりと、多拠点生活をエンジョイ中。 大阪府生まれ。神戸大学経営学部卒業。二児の父。著書に「世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論」(いろは出版)。

※1: http://www.globalnote.jp/post-14269.html

※2: http://www.globalnote.jp/post-1339.html

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